君と歩いた道

2017年に公立中高一貫校に入学した娘は、2023年に大学生になりました。

空色の傘とか雨漏りする傘とか

こももが生まれてから、我が家には長いこと空色の傘が2本あった。

こももが小さい頃は、傘を差す練習が楽しくなるように、かわいい小さい傘を買った。レインコートを着て、差しても差さなくても濡れることには変わりがない小さい傘。こぐまのキャラクターが描いてあるピンク色の傘とか。

小学校に上がって、登下校などで親の目が届かなくなるので、通学用に黄色い傘を買った。灰色の風景の中でも目立つように、交通安全の願いを込めて持たせていた。

そして私の傘を買うときは、急に雨に降られたとき。天気が好い日には、なぜか傘を買う気にならない。急に雨に降られて必要に迫られてやっと買うのだが、コンビニのビニ傘ばかり溜まっちゃってもつまらないので、日用品を売っているスーパーとかに飛び込んで手頃な傘を買う。そういうときにこももが選ぶ傘は、空色の傘。こももの好きな色だ。それを私が使う。

いつしか空色の傘のうちの1本を、こももが使うようになっていた。私からすると、まだ黄色い傘を使っていてほしい時期だったが、こももは意気揚々と空色の傘を使い始めた。私がもう1本を使うので、まるでおそろいみたいに。こももはその空色の傘を気に入っていた。ちょっとくたびれてきても、これがいい!と言ってずっと使い続けた。

ちょうど受検を間近に控えた頃、空色の傘の1本が家の傘立てにないことに気づいた。どこかに置いてきたようだ。それまでもこももが傘を忘れてくることは何度かあったが、友達が家まで届けてくれたり、学校では用務員さんが一緒に探してくれたりして、必ず戻ってきた傘だった。それが心当たりの場所を探しても見に行ってもどこにもなくて、行方不明になって久しい。この傘が戻ってこないことによる喪失感は意外と大きい。

こももがその後使い始めたのは、すでに家にあったブルーのペイズリー柄の傘。これも急な雨対応で私が買ってきたのだが、ワンタッチではないし華奢なので使い勝手はよくない。それでも、こもものお気に入りになった。その傘も、最近の台風の長雨のためか、いよいよ壊れたと言ってきた。

そして今度は、私が使うもう1本の空色の傘が、差していると、雨の雫が骨を伝ってくるようになった。その冷たい雫が、頭のてっぺんから首筋に伝ってくることもある。ブルータス、おまえもか・・・と口をついて出た。意味はない。語呂的に言いたくなっただけだ。

灰色の雨模様の中で、空色の傘を差していると、その空色がとてもきれいなことに気づいてハッとさせられる。その瞬間が、何ていうか、好きなんですね。