君と歩いた道

シングルマザーもものブログです。公立の中高一貫校に通う娘がいます。

苦しいときの寅さん頼み

 苦しいときこそ、笑うことを求めているような気がします。気分が切り替わるスイッチがあるとすれば、それは笑うことではないかと。笑うことによって、重く立ち込めていた靄が急に晴れてくる、そんなふうに感じることがあります。ひとりでいるときは尚更です。

 まず、鏡の中の自分に笑いかけ、鏡に映った自分の顔を観察しながら、笑顔の研究をします。面白いことを想像して思わず笑ってしまう自分の笑顔をもとに、今度は面白いことを想像しないでその笑顔を再現してみたりします。次に、無意識でも口角を上げていられるように意識したり、声を出して笑ってみたり、それぞれの笑顔の違いを探したりします。

 こうした一連の作業を通して、自分の笑顔を見るのは、図らずも下がった気分を上げるのに有効なのだなと気づきました。

 

 この3か月を振り返ると、私の場合は外出自粛のストレスより、感染拡大のさなかに通常勤務を継続させる不安の方が圧倒的に大きく、人と人との感染防止の意識の差や、それに伴う周りに対する労いなど、共有できたりできなかったりで、とても苦しかったです。

 結局、自分さえ良ければいいという諦めへ向かいがちになるのですが、いやいや、ウィルスは自分だけ特別扱いしてくれるわけではないから、やっぱり組織的に予防を共有できるように辛抱強く働きかけていかなければ、回り回って自分や家族をも守れないのだろうから・・という堂々巡り。いってこいの繰り返し。

 人と接触する仕事だからこそ、お客様、社員とその家族に対する安全と安心を少しでも守りたい、自主的に休業する同業他社が多い中で営業を続けるからには、そういうメッセージや取り組みがトップには、仮にパフォーマンスだとしても必要な状況だっただろうと思いますが、私は社長ではありません。給与減額や解雇に怯える一社員です。それでも、社長の周りをうるさく飛び回るハエのように、動かない社長の心を動かす言葉を探し、言いたいことが十あったら九は抑えても、一は言わずにはいられないという場面がたくさんありました。

 そういうことはこの緊急事態に限った話ではなく、常に背中合わせであることなのですが、特にこの状況で社会的にも浮き彫りになったということだと思います。

 

 今年のゴールデンウィークはステイホーム週間と呼ばれ、おうちにいようと叫ばれていました。もしそう叫ばれていなかったとしても、仕事以外は家にいたと思いますが、手持ち無沙汰になったときのためにと寅さんのDVDを10枚借りました。観られなくても観たいときにいつでも観られるように。

 実は最初は、大林宣彦監督の作品を探したのです。個人的に追悼のタイミングでした。しかし同じことを考える人は少なくないわけで貸出中ばかり。いろいろな作品を10枚ではなく、同じ監督の作品を通して観たかったので、気楽に観られて好きな作品、ということで寅さんに行き着きました。

 それでまあ唐突に結論に至るのですが、寅さんを観て寅さんのおかしみに笑わされているうちにハッとしたというか、笑うことを思い出したのでした。笑うことで新しい力が湧いてくる瞬間を、身をもって体験したのです。そして、自分が言いたいことすべてを言い尽くさないことで、周りの人が考えを口にする余地を増やすということ。これは実感としての再発見でした。

 ちなみに、このとき借りたのはシリーズ第30作〜第39作で、返却後まもなく第1作〜第10作を借りました。第1作は1969年公開で、百円札が登場していました。