君と歩いた道

2017年に公立中高一貫校に入学した娘は、2023年に大学生になりました。

万引き家族

娘が忙しく一緒に行く調整がつかないため、またしても1人で映画館へ。娘はプログラムを買ってきてくれれば、そのうちテレビ放映を観られればいいと。

映画館のポイントを使って無料で観られるのはテンションが上がるところです。ちゃんと良い席も押さえられました。

ところがですよ、何ともがっかりなことが起きてしまいました。遠くを見るときのメガネを忘れてしまったのです。私は超ど近眼なのでふだん強いメガネをかけているのですが、室内でかけているやや弱いメガネのまま家を出てきてしまったのでした。

しかも時間を間違えて、上映が始まってから劇場へ入り、弱いメガネで見えない上に真っ暗闇でさらに見えず、予約した席までたどり着けない。ぐるぐる迷って、周りの観客の方々には多大なるご迷惑をかけて、手探りで這うようにして席にたどり着きました。

特に暑い日で、館内のクーラーも効きが悪く、更年期も相まって汗だく。

何という残念なこと!

しかし気を取り直して、せっかくの映画を楽しまないと!

遠くを見るメガネがないと、こんなに見えないのかと呆然としました。今さらのようで泣くに泣けない大失態。それでも、持ち前の想像力を駆使して観てきましたよ。

是枝監督の映画作品は、昨秋の『三度目の殺人』以来ですね。先日テレビ放映されていた『海街diary』は録画して観ました。『海街diary』は、公開当時小5だった娘が観に行きたいと言っていたのに都合がつかず行けなかったので、特に思い入れがありました。『そして父になる』も前回のテレビ放映を録画で観ました。

そして『万引き家族』です。

予備知識なく観に行ったのですが、その家族には実は親とか子とかきょうだいという血縁関係がなくて、今にも切れてしまいそうな絆の糸でそっと結ばれているような家族だったのだと観て行く過程でわかりました。

しいて言えば生きていくために寄り添う仲間というか。おばあちゃん役、お父さん役、お母さん役、お姉ちゃん役・・・そんなささやかなおままごとのような、それぞれが役を担っている関係。

切ないし、かといって全肯定でもなく、ただそこに置かれている人の生きる姿を淡々と描写する映像は、とても素敵でした。

樹木希林が圧巻でした。そしてやっぱり大好きです。洒落ていて温かい存在感。

柄本明も、出番は少ないのに強烈な印象を残す存在感。そういえば、柄本明安藤サクラはプライベートで義父と息子嫁の関係でしたね。

安藤サクラを事情聴取する池脇千鶴の台詞がまた憎らしいほど見事で、物事を読み解くように便利な枠にはめ込んでたたみ込んでいく誘導尋問に、違うだろう、そうじゃないだろう、という自分の中の観客の声と、諦めてしまいそうになりながらも逞しくあろうとする安藤サクラの無言の涙、汗を拭うように止めようとしても後から後から溢れてくる涙に、これほどの限界状況でも人間性を失うことができない苦しさというか、それは正しい姿なのかもしれないけれど、観ていて胸がしめつけられました。

子役の子たちの意思を持った目、みずみずしい行動の変化、成長、可能性が、作品を通して励ましになっているようで、子どもが被害に遭う事件や事故が後を絶たないこの世界で、あらゆる子どもたちに、置かれている現実が厳しくてもどうか知恵と勇気を持って生き延びてほしい、追い詰められる子どもたちを見過ごさない社会にしなければ、という希望を持ちました。

改めて全体を振り返ると、子どもの目の高さから見た風景のように感じました。

うまく言えないのですが、メガネをかけてもう一度ちゃんと観たいです。