君と歩いた道

2017年に公立中高一貫校に入学した娘は、2023年に大学生になりました。

未入金のお知らせ

というのは養育費のことである。

先方は養育費の送金を自動振込にしているとのことで、毎月規則的に同じ日に着金するのだが、ときどき降って湧いたように着金していないことがある。それが新年早々また起きた。残高不足で落ちなかったことは想像に難くない。

初めて着金が確認できなかったとき、私は頭がカーッと熱くなり、鼓動が激しくなり、脚がガクガク震えて動揺した。このままなし崩し的に入金が途絶えるのではないか、それは断じて許さない、先方が代理人を後ろ盾に提示した雀の涙ほどの最低額をこちらは呑んだのだ、など言葉にしきれない思いが錯綜しつつ、支払期日が過ぎるのを待ち電話した。

養育費の調停の後に代理人を立てて申立した損害賠償請求以来の接触。裁判では、こちらの真実と先方の嘘を丹念に照らし合わせることを重ね、先方の矛盾をあぶり出した。裁判官の和解案を受け入れたとはいえ、その中身は事実上の勝訴でけじめがついた。

それでもなお、電話して話さなければならないとなるとまだ脚がすくむ。また傷口をえぐられるようなことを言われるのではないか。できれば直接話したくない。しかし怖がってばかりはいられない。こちらはシングルマザーだ。子どもの権利を護ることができるのは私しかいない。最低限の事務的な会話に徹し、感情をにじませるような要素は一切出さない、出したくない、何も感じさせたくないと踏ん張った。そして意外にも、淡々と用件だけ言えた。

先方は聞かれもしないのに言い訳に終始する。残高が足りないことに気がつかなかったから落ちなかった、などと言うまでもなくわかりきったことを言う。他にあり得ないだろう。残高があれば落ちる。また、少なくとも留守録を聞いて折り返してくるということは養育費を踏み倒す気はないということなのか。しかしそれなら毎月ちゃんと残高を確認してくれないか。それにしても、なぜそんなに明るい声で話せるのだろう。まったく理解不能

それ以降、未入金のお知らせのために電話をかけて折り返しを受け入金されるという一連の流れを何度か経て、こちらもだんだん慣れてきた。思い切って電話をかけて着信を残すこと(督促の記録)、用件のみ(振込不能の確認と再振込の依頼)を先方の言動に巻き込まれずに感情を入れずに話すことに。

そんなことがこの10年間に両手で数えるくらいあっただろうか。そしてこの先、娘が成人するまであと7年。お互いに健康でしぶとく生きていきたい。どうぞよろしくお願いしますね。