君と歩いた道

シングルマザーもものブログです。公立の中高一貫校に通う娘がいます。

去年の今頃は、と言ってみる

一息ついたときなどに不意に口をついて出てくるフレーズ。長いこと生きていると数え切れないほど呟いてそうだ。思わずそう呟いた後から、ああ、また言ってる・・・と妙に冷静になる。しかしそこはあえて怯まず、去年の今頃は、と言ってみる。

去年の勤労感謝の日、首都圏模試センターの公立中高一貫校模試を受けに行くこももを送迎していた。この頃すでに心臓を鷲づかみにされているかのような緊張感で、力を発揮できますように!と祈りながら試験が終わるのを待っていた。ところが、こももの手応えはイマイチ。こもも曰く、それまで受けてきた適性検査模試の出題形式とまるっきり違っていて動揺したのだという。しばらくして返ってきた結果はイマイチどころじゃない惨憺たるもの。志望校の合格率30%未満と出た。あまりにも想像を超える最低ラインで、おやおや、と笑いが込み上げてくる。なぜかショックを受けたり落ち込んだりはしなかった。

こももがこの学校を志望するよりも前に、私がひそかに感じていたのは、この学校はこももに合っているかもしれない、こももだったらこの学校で伸びるんじゃないか、という根拠のないイメージ。もしそれが当たっているとしたら、受かるんじゃないかと思った。それは模試ではわからない。志望校が求めている子どもの姿を彷彿とさせるような模試には、出会ったことがなかったから。

その少し前に受けた塾のオープン模試の結果は、先生がめずらしく「よくできていましたよ〜」と明るい声で報告してくださって、「こももさん、ふだんの演習だと本気が出ないのかしら?本番では力を発揮するタイプなのかしら?」という疑問形に対して何とも応えようがなく、「うーん、どうなんでしょう?」と唸りながら先生の好評価をすがる思いで聞いていた。

出願が刻一刻と近づいてくる。緊張の糸が張り詰めてプツンと切れそうで息がつまる。受かるかもしれないし、落ちるかもしれないし、どっちに転ぶかわからないと思っていても追い詰められる。そういう時期だった。

また、そんなふうにこももの志望校受検を志向しながら、もし合格したとして本当にそれがこももにとって最良の選択なのか?という迷いも降っては湧いての繰り返し。こもも自身が行きたいと言っているならそれが一番だと思いつつ、小学生の選択だ。それでも、人生どこかで本人が選び取っていくわけだから、どっちに転んでも、きっと大丈夫!合格することもあれば、合格しないこともある。合格して良かったと思うかもしれないし、あのとき合格しないで結果的に良かったと思うかもしれない。どっちにしても、きっとこももは自分の道を切り拓いていく・・・そんなふうに、ぐるぐるぐるぐる考え抜いていた。

「サンタさんにリクエストするプレゼントを志望校合格にしてもいい?」と聞いてくるこもも。「サンタ頼みする暇があったら勉強した方が早いんじゃないか?」と私が言うと、「確かに・・・」と納得するこもも。クラスの女子全員と学校の先生全員宛に、年賀状61枚手書きで書くこもも。歌を歌い、絵を描き、鏡に映った自分の顔のニキビを念力で消そうとするこもも。受検生だからって自分を変えない。変えられない。ただ、緊張が日ごとに増幅していく。

狂おしい時期だった。

出願手続等説明会の翌日、私は待ち切れずに学校の担任を訪ねて報告書作成を依頼した。その週末に、近所のパレットプラザで証明写真撮影。こももが願書を書き、そこにいよいよ写真を貼り、その翌週に願書をまた担任の先生へ持ち込み受け渡し。今思えば、報告書作成と願書をそろえて担任に手渡せば二度手間にならなかった。気もそぞろで慌てていた。

あれから1ヶ月が、あれから3ヶ月になり、あれから半年になり、あれから1年になる。最近やっと、こももはこの学校に入学して良かったのだと、心から思えるようになってきた。